■これを閲覧する前に…。
以前ニコ動に投下したストーリーの文章化です。
一応大まかなストーリーに変化はありませんが、文章化するにあたって一部表現を変えています。
…それでも、伝わりづらかったらごめんなさいorz。(正直文章力には自信がないです(白目))
このストーリーは「『AA』と『セヤナー』のクロスオーバー」となっています。
事前情報無しでも読めるようには努めますが、念のため「虐マタ時代(しぃ虐)」について事前に調べておくことをおすすめします(汗)。
(一応、「虐マタ時代」の概要を補足として最下部に追記いたしました。)
かつて、僕は「しぃ」と呼ばれるAAの一人だった。
僕は「しぃ族」としては希少と言われている男性個体だという。
…しかし、「荒らし」にとっては男女なんて関係なかったのだろう。
虐マタ時代当時、「しぃ」は「荒らし」の主な標的だった。
僕も例外ではなく「荒らし」による虐待によって片耳を失い、体中には消えることのない無数の傷が刻まれた。
住民たちはそんな僕のようなAAを「でぃ」と呼ぶのだそうだ。
家も両親も失い、僕はただ独り町中をさまよっていた。
(…僕は…このまま死んでいくんだろうか…)
そんなことを考えていた時、こんな話を耳にした。
「東の果ての山を越えて、大海を越えると、そこには楽園があるんだって。
そこなら、僕らみたいな『被虐者』でも幸せに暮らせるらしいけど…辿り着く前に、死んじゃうんだろうな…。」
「…僕にも無理だょぅ…。」
(…東の果ての楽園…。)
当時まだ幼かった僕は、そんな話を真に受けてしまっていた。
…それが、この長い旅の始まりだった。
新訳・でぃの旅 ― eden in the east ―
「路地裏のセヤナー」
ストーリー原案:でぃちゃん死出の旅(AA長編@2ch掲示板)
AAキャラクター原案:しぃちゃん秋の空。(モナー大好き@2ch掲示板)
旅の途中、僕がたどり着いたのは、とある小さな街だった。
言うほど寂れているわけではないが、それでもあまり人気(ひとけ)がなかった。
…思い返せば、街に来るのもかなり久々だったし、思えば長い距離を歩いてきたものだった。
この街に長居する予定はないけど、それでも少し休んでいこう…。
そう思い、壁に背を預けて休憩していた時だった。
ふと、近くの路地裏から物音が聞こえたかと思えば、そこから一匹のスライムが出てきた。
「…ヤッ…!ヤー…!!」
「あっ…。」
そのスライムは、僕の姿に気づいたと思ったら、すぐに路地裏の中に逃げていってしまった。
スライムが出てきた路地裏を、僕は恐る恐る覗いてみた。
「ヤー…!クルナー…!コワイー…!」
「…………。」
一匹のスライムは、怯えているように震えていた。
傷だらけの僕の身体(からだ)…。
誰かに笑われたり、変に同情されたり、心配されたりなんてことは、今まで何度もあったから慣れていたが…。
誰かに怖がられるのは、正直初めてだった。
とりあえず撫でて落ち着かせようとも考えたが、この路地裏は僕が入るには狭すぎる。
どうしようものかと考えていたら、
この街に来る途中で、小さな木の実を何個か拾っていたことをふと思い出す。
持っていた手帳の1ページを破り、即席の紙皿にそれを乗せて与えてみることにした。
「ヤー…?」
「…大丈夫、おいで。僕はなにもしないから。」
僕がそう言うと、一匹のスライムはまた路地裏から出てきて、木の実をじっと見つめた。
僕はその場から2、3歩下がり、様子を伺った。
一匹のスライムは、僕が危害を加えないことを理解したのか、木の実を食べ始めた。
「…ウマイー、ウマイー…。」
…よほどお腹を空かしていたんだろうか。
小さい木の実とは言え、何個もあったそれを、目の前のスライムはものの数秒で全て平らげてしまった。
「…ゴチソーサマ ヤデー…アリガトナー…。」
「…いえいえ。」
「ウチナー セヤナー ヤデー。」
そのスライムは、「セヤナー」と名乗った。
「セヤナー」と言う名前は、僕も聞き覚えがあったが…実物を見たのは初めてだった。
「…オニイチャンハ…?」
「…僕は『でぃ』。東の果てを目指して旅をしている途中なんだ。」
「…オニイチャン…タビビトサン…?」
「…そう、だね。」
一応礼儀として、僕も自己紹介をしたが…。
誰かと話すのも久々だったため、僕自身もたどたどしいところがあった。
「…君はここに住んでるの?」
「…ウチナー…イエナキコー…」
…マズイ、ちょっとした好奇心とは言え、どうやら地雷を踏んでしまったみたいだ…。
「…あ、あああ…ご、ごめん…辛いこと…きいちゃった…かな…。」
「…イイノ…オニイチャンニハ…オシエテモ ダイジョウブダト オモッタカラ…。」
「…………?」
…セヤナーは、そのまま自分の過去を、静かに語り始めた。
セヤナーは、元々はこの街の自然公園に住んでいたんだそうだ。
「親セヤナー」と一緒に、虫や木の実を獲って生活していたのだという。
いつもどおりに親子で獲物を狩り、いつもどおりに親子で遊び、いつもどおりに親子で眠りについたはずだった…。
…しかし、ある日目が覚めたら、見知らぬ場所に居たという。
そこは物置部屋のようで、自分たち親子は水槽の中に居て、周りには他の水槽がいくつもあって…その中には彼女以外の「セヤナー」が居たのだという。
誰かが彼女を拾って、愛玩生物として飼うつもりだったのだろうか。
…しかし、そうではなかった。
一人の人間が物置の中に入ってきて、水槽を持って戻っていった少し後に…。
「ヤ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!! イタイー! イタイー!!」
彼女に聞こえてきたのは、同族たちの悲鳴だった。
それ以降、悲鳴は定期的に物置部屋に届いてくる、そして…
「タスケテー! アオイー! アオイー!! ア゛ッ…!」
途中で悲鳴が鳴り止んだかと思えば、またこの前の人間が物置の中に入ってきて、そして別の水槽を持ってまた戻っていく。
「オカーサン… コワイー…。」
「ヤデー…。」
彼女ら親子は、いつ自分たちの番が来るのか怯えながら、何日も同族たちの悲鳴を聞き続けていた。
…そして数日後…またこの前の人間が物置の中に入ってきたかと思ったら、
自分たちがはいっている水槽を持ち上げた…とうとう彼女ら親子の番が来てしまった。
自分たちは何処に連れて行かれるのか、これから他の同族たちのように殺されてしまうんだろうか。
水槽には蓋がしてあったため、逃げ出すことはできない状態だった。
…彼女ら親子が連れてこられたのは、その人間の寝室だっただろうか。
彼女ら親子が入った水槽は、机の上に置かれた。
その時、その人は何かを忘れたのか、それとも何かを思い出したのか…。
机においたはずみで水槽の蓋が少しズレたことや、換気のために窓を開けっ放しにしていたことに気づかずに、急いで部屋を出ていってしまった。
水槽の蓋がズレたことで、少し隙間ができており、子セヤナーがぎりぎり通れる大きさだった。
「親セヤナー」はその隙を見計らい、「子セヤナー」を水槽の外へ逃し、開いた窓のサッシに乗せた。
「オチビー… ウチガイナクテモ… ヒトリデ イキルンヤデー…。」
「ヤ…? オカーサン…? ナニヲ イッテルン ヤデー!」
子セヤナーは一人で逃げたくなかった。(…僕が聞いてもそれは当然だと思う。)
しかし時間は待ってくれず、部屋の外から足音が聞こてくる。
「ヤ…!」
「ハヤク… ハヤク ニゲルンヤデー!!」
何もできなかった子セヤナーは、部屋の外からの足音と親セヤナーの激で、窓から外へと飛び出した。
「ヤー!! イタイー! イタイー!!」
…親セヤナーの悲鳴を聞きながら、一人必死でその家から離れた…。
公園に戻ればまた「奴」に捕まってしまう。
しかし、街の外に向かうにも彼女にとっては長すぎる距離。
途中で誰かに見つかれば、「野良セヤナー」として駆除されてしまう。
…それで、彼女は人間が入るには狭いであろう、この路地裏の中に逃げ込んだのだという…。
「セヤナー」が僕にすべてを語った後…「オカーサン…」とつぶやき、そのまま一人で黙り込んでしまった。
…僕と同じだ…。
彼女ら「セヤナー」も…「しぃ(ぼくたち)」と同じだった…。
…尤も、僕が物心つく頃には、既に両親は殺された後で…。
この子は、身近で親の死を体験していて。
僕の身体には…一生消えることのない無数の傷が刻まれていて…。
しかしこの子は、直接傷を受けたわけではない。
…そういう点では、僕と彼女の境遇は対称的かもしれない。
…それでも、この子が持っている「心の傷」は…僕が持っている「それ」と、同じものだって…そう思う。
だから、放っておくことなんて、できなかった。
「…ねぇ。」
「…ヤー?」
「…もしかしたら、『ここ』にいるよりも…もっと辛いことがあるかもしれないし…
君が好きな食べ物も…もしかしたら手に入らないかもしれない…。」
「…………?」
「…それでも、君が『いい』って言うなら…。」
「…僕と、一緒に来るかい…?」
僕が手を差し伸べると…セヤナーは、静かに答えた。
「…セヤナー…。」
「東の果ての山を越えて、大海を越えると、そこには楽園があるんだって…。」
…「東の果ての楽園」は、本当にあるのかもしれないし、もしかすれば「単なるお伽噺」なのかもしれない。
僕は…いや、「僕たち」は、それを確かめるために旅をしている。
この先には、もしかしたら多くの困難があるのかもしれない。
でも、その先にきっとあることを信じて…
…キミと一緒に、「東の果ての楽園」へ…
著.ADsp
(文法的な問題があったらごめんなさいorz。)
【追記】補足。
特に「しぃ」に対する虐待・虐殺AAを用いた荒らしが目立ったため、一部界隈では「しぃ虐」とも呼ばれている。
(「荒らし」の標的は「しぃ」以外にもいくつかいたりするが、ここでは割愛。)
セ虐との違いは、単なる「荒らし」からストーリーモノに昇華した…という点だろうか。
(セ虐の場合は、通常の「セヤナー作品」から派生した…というのが筆者の見方なので。)
虐待表現に関しては、「ストーリー、フィクションとしてのそれはOK」だが、「故意的なスレ違い、もしくは板違いにおける荒らしはNG」…というのが筆者の立ち位置となります。
ちなみにPixiv百科事典では「マ虐」と呼ばれているようで…。
上記の時代の最中、表現の是非を巡った戦争を「虐マタ抗争」「マ虐論争」と呼ぶ。
(厳密には「荒らし」への報復、そしてさらなる報復の連鎖らしいですが…まあ、戦争と言うのは間違いはないだろう。)
その荒らし合いの戦争の結果が、「モナギコ系AAの衰退」と言われている。
(モナギコ系衰退の原因自体にも諸説はあるが、その一つと解釈して構わない。)
ニコ動で筆者が掲げているのは、「この戦争を繰り返させないこと」であり、上記の通り「表現を否定すること」ではない。
(コメント次第では更に追記していくかもしれません(汗))
以前ニコ動に投下したストーリーの文章化です。
一応大まかなストーリーに変化はありませんが、文章化するにあたって一部表現を変えています。
…それでも、伝わりづらかったらごめんなさいorz。(正直文章力には自信がないです(白目))
このストーリーは「『AA』と『セヤナー』のクロスオーバー」となっています。
事前情報無しでも読めるようには努めますが、念のため「虐マタ時代(しぃ虐)」について事前に調べておくことをおすすめします(汗)。
(一応、「虐マタ時代」の概要を補足として最下部に追記いたしました。)
かつて、僕は「しぃ」と呼ばれるAAの一人だった。
僕は「しぃ族」としては希少と言われている男性個体だという。
…しかし、「荒らし」にとっては男女なんて関係なかったのだろう。
虐マタ時代当時、「しぃ」は「荒らし」の主な標的だった。
僕も例外ではなく「荒らし」による虐待によって片耳を失い、体中には消えることのない無数の傷が刻まれた。
住民たちはそんな僕のようなAAを「でぃ」と呼ぶのだそうだ。
家も両親も失い、僕はただ独り町中をさまよっていた。
(…僕は…このまま死んでいくんだろうか…)
そんなことを考えていた時、こんな話を耳にした。
「東の果ての山を越えて、大海を越えると、そこには楽園があるんだって。
そこなら、僕らみたいな『被虐者』でも幸せに暮らせるらしいけど…辿り着く前に、死んじゃうんだろうな…。」
「…僕にも無理だょぅ…。」
(…東の果ての楽園…。)
当時まだ幼かった僕は、そんな話を真に受けてしまっていた。
…それが、この長い旅の始まりだった。
新訳・でぃの旅 ― eden in the east ―
「路地裏のセヤナー」
ストーリー原案:でぃちゃん死出の旅(AA長編@2ch掲示板)
AAキャラクター原案:しぃちゃん秋の空。(モナー大好き@2ch掲示板)
旅の途中、僕がたどり着いたのは、とある小さな街だった。
言うほど寂れているわけではないが、それでもあまり人気(ひとけ)がなかった。
…思い返せば、街に来るのもかなり久々だったし、思えば長い距離を歩いてきたものだった。
この街に長居する予定はないけど、それでも少し休んでいこう…。
そう思い、壁に背を預けて休憩していた時だった。
ふと、近くの路地裏から物音が聞こえたかと思えば、そこから一匹のスライムが出てきた。
「…ヤッ…!ヤー…!!」
「あっ…。」
そのスライムは、僕の姿に気づいたと思ったら、すぐに路地裏の中に逃げていってしまった。
スライムが出てきた路地裏を、僕は恐る恐る覗いてみた。
「ヤー…!クルナー…!コワイー…!」
「…………。」
一匹のスライムは、怯えているように震えていた。
傷だらけの僕の身体(からだ)…。
誰かに笑われたり、変に同情されたり、心配されたりなんてことは、今まで何度もあったから慣れていたが…。
誰かに怖がられるのは、正直初めてだった。
とりあえず撫でて落ち着かせようとも考えたが、この路地裏は僕が入るには狭すぎる。
どうしようものかと考えていたら、
この街に来る途中で、小さな木の実を何個か拾っていたことをふと思い出す。
持っていた手帳の1ページを破り、即席の紙皿にそれを乗せて与えてみることにした。
「ヤー…?」
「…大丈夫、おいで。僕はなにもしないから。」
僕がそう言うと、一匹のスライムはまた路地裏から出てきて、木の実をじっと見つめた。
僕はその場から2、3歩下がり、様子を伺った。
一匹のスライムは、僕が危害を加えないことを理解したのか、木の実を食べ始めた。
「…ウマイー、ウマイー…。」
…よほどお腹を空かしていたんだろうか。
小さい木の実とは言え、何個もあったそれを、目の前のスライムはものの数秒で全て平らげてしまった。
「…ゴチソーサマ ヤデー…アリガトナー…。」
「…いえいえ。」
「ウチナー セヤナー ヤデー。」
そのスライムは、「セヤナー」と名乗った。
「セヤナー」と言う名前は、僕も聞き覚えがあったが…実物を見たのは初めてだった。
「…オニイチャンハ…?」
「…僕は『でぃ』。東の果てを目指して旅をしている途中なんだ。」
「…オニイチャン…タビビトサン…?」
「…そう、だね。」
一応礼儀として、僕も自己紹介をしたが…。
誰かと話すのも久々だったため、僕自身もたどたどしいところがあった。
「…君はここに住んでるの?」
「…ウチナー…イエナキコー…」
…マズイ、ちょっとした好奇心とは言え、どうやら地雷を踏んでしまったみたいだ…。
「…あ、あああ…ご、ごめん…辛いこと…きいちゃった…かな…。」
「…イイノ…オニイチャンニハ…オシエテモ ダイジョウブダト オモッタカラ…。」
「…………?」
…セヤナーは、そのまま自分の過去を、静かに語り始めた。
セヤナーは、元々はこの街の自然公園に住んでいたんだそうだ。
「親セヤナー」と一緒に、虫や木の実を獲って生活していたのだという。
いつもどおりに親子で獲物を狩り、いつもどおりに親子で遊び、いつもどおりに親子で眠りについたはずだった…。
…しかし、ある日目が覚めたら、見知らぬ場所に居たという。
そこは物置部屋のようで、自分たち親子は水槽の中に居て、周りには他の水槽がいくつもあって…その中には彼女以外の「セヤナー」が居たのだという。
誰かが彼女を拾って、愛玩生物として飼うつもりだったのだろうか。
…しかし、そうではなかった。
一人の人間が物置の中に入ってきて、水槽を持って戻っていった少し後に…。
「ヤ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!! イタイー! イタイー!!」
彼女に聞こえてきたのは、同族たちの悲鳴だった。
それ以降、悲鳴は定期的に物置部屋に届いてくる、そして…
「タスケテー! アオイー! アオイー!! ア゛ッ…!」
途中で悲鳴が鳴り止んだかと思えば、またこの前の人間が物置の中に入ってきて、そして別の水槽を持ってまた戻っていく。
「オカーサン… コワイー…。」
「ヤデー…。」
彼女ら親子は、いつ自分たちの番が来るのか怯えながら、何日も同族たちの悲鳴を聞き続けていた。
…そして数日後…またこの前の人間が物置の中に入ってきたかと思ったら、
自分たちがはいっている水槽を持ち上げた…とうとう彼女ら親子の番が来てしまった。
自分たちは何処に連れて行かれるのか、これから他の同族たちのように殺されてしまうんだろうか。
水槽には蓋がしてあったため、逃げ出すことはできない状態だった。
…彼女ら親子が連れてこられたのは、その人間の寝室だっただろうか。
彼女ら親子が入った水槽は、机の上に置かれた。
その時、その人は何かを忘れたのか、それとも何かを思い出したのか…。
机においたはずみで水槽の蓋が少しズレたことや、換気のために窓を開けっ放しにしていたことに気づかずに、急いで部屋を出ていってしまった。
水槽の蓋がズレたことで、少し隙間ができており、子セヤナーがぎりぎり通れる大きさだった。
「親セヤナー」はその隙を見計らい、「子セヤナー」を水槽の外へ逃し、開いた窓のサッシに乗せた。
「オチビー… ウチガイナクテモ… ヒトリデ イキルンヤデー…。」
「ヤ…? オカーサン…? ナニヲ イッテルン ヤデー!」
子セヤナーは一人で逃げたくなかった。(…僕が聞いてもそれは当然だと思う。)
しかし時間は待ってくれず、部屋の外から足音が聞こてくる。
「ヤ…!」
「ハヤク… ハヤク ニゲルンヤデー!!」
何もできなかった子セヤナーは、部屋の外からの足音と親セヤナーの激で、窓から外へと飛び出した。
「ヤー!! イタイー! イタイー!!」
…親セヤナーの悲鳴を聞きながら、一人必死でその家から離れた…。
公園に戻ればまた「奴」に捕まってしまう。
しかし、街の外に向かうにも彼女にとっては長すぎる距離。
途中で誰かに見つかれば、「野良セヤナー」として駆除されてしまう。
…それで、彼女は人間が入るには狭いであろう、この路地裏の中に逃げ込んだのだという…。
「セヤナー」が僕にすべてを語った後…「オカーサン…」とつぶやき、そのまま一人で黙り込んでしまった。
…僕と同じだ…。
彼女ら「セヤナー」も…「しぃ(ぼくたち)」と同じだった…。
…尤も、僕が物心つく頃には、既に両親は殺された後で…。
この子は、身近で親の死を体験していて。
僕の身体には…一生消えることのない無数の傷が刻まれていて…。
しかしこの子は、直接傷を受けたわけではない。
…そういう点では、僕と彼女の境遇は対称的かもしれない。
…それでも、この子が持っている「心の傷」は…僕が持っている「それ」と、同じものだって…そう思う。
だから、放っておくことなんて、できなかった。
「…ねぇ。」
「…ヤー?」
「…もしかしたら、『ここ』にいるよりも…もっと辛いことがあるかもしれないし…
君が好きな食べ物も…もしかしたら手に入らないかもしれない…。」
「…………?」
「…それでも、君が『いい』って言うなら…。」
「…僕と、一緒に来るかい…?」
僕が手を差し伸べると…セヤナーは、静かに答えた。
「…セヤナー…。」
「東の果ての山を越えて、大海を越えると、そこには楽園があるんだって…。」
…「東の果ての楽園」は、本当にあるのかもしれないし、もしかすれば「単なるお伽噺」なのかもしれない。
僕は…いや、「僕たち」は、それを確かめるために旅をしている。
この先には、もしかしたら多くの困難があるのかもしれない。
でも、その先にきっとあることを信じて…
…キミと一緒に、「東の果ての楽園」へ…
著.ADsp
(文法的な問題があったらごめんなさいorz。)
【追記】補足。
- Q:「虐マタ時代」「しぃ虐」って?
特に「しぃ」に対する虐待・虐殺AAを用いた荒らしが目立ったため、一部界隈では「しぃ虐」とも呼ばれている。
(「荒らし」の標的は「しぃ」以外にもいくつかいたりするが、ここでは割愛。)
セ虐との違いは、単なる「荒らし」からストーリーモノに昇華した…という点だろうか。
(セ虐の場合は、通常の「セヤナー作品」から派生した…というのが筆者の見方なので。)
虐待表現に関しては、「ストーリー、フィクションとしてのそれはOK」だが、「故意的なスレ違い、もしくは板違いにおける荒らしはNG」…というのが筆者の立ち位置となります。
- Q:「虐マタ」の由来って?
ちなみにPixiv百科事典では「マ虐」と呼ばれているようで…。
上記の時代の最中、表現の是非を巡った戦争を「虐マタ抗争」「マ虐論争」と呼ぶ。
(厳密には「荒らし」への報復、そしてさらなる報復の連鎖らしいですが…まあ、戦争と言うのは間違いはないだろう。)
その荒らし合いの戦争の結果が、「モナギコ系AAの衰退」と言われている。
(モナギコ系衰退の原因自体にも諸説はあるが、その一つと解釈して構わない。)
ニコ動で筆者が掲げているのは、「この戦争を繰り返させないこと」であり、上記の通り「表現を否定すること」ではない。
(コメント次第では更に追記していくかもしれません(汗))
- 2017/11/9:投下
- 2017/11/25:補足を追加
- 2017/12/2:補足を追記・修正
- 2017/12/5:本文の誤字脱字を修正、冒頭部分を追記修正
このページへのコメント
誤字脱字の修正ついでに、タイトルに太字と色を付けて見るテスト。
…台詞の方も色分けを考えたが、白背景にピンク色の文字は流石に見づらいため断念…。(汗)
…なお、これは読み切りです。
連載モノとするばあい、かつてのAA長編板のようなリレー形式が望ましいかも。
乙カレ〜 虐マタってすんげー前に出来た物だったんだなぁ・・・これからの2匹の冒険譚が気になりますよぉー!コレ〜
動画では分からなかった部分、表現されていなかった部分が補足されていて良かったです。
セヤナーとAAのストーリーというものが個人的に斬新で、面白かったので、セ虐に限らず、また動画や小説で作っていただければと思っています。
応援しています。