セヤナーを虐めたりいじめたりイジめたりしたい

とある地域の自然豊かな公園。
今は設置されたベンチや、持参したシートの上で食事をする人々が大勢集まる時間帯だ。
木に寄りかかり、エビカツサンドを品良く口に含むスーツ姿の人物の足元に、一匹の成セヤナーが近寄る。
「セーヤー…… エビエビエビ……」
姿勢を低くし、目立たない体勢をしていた。
ある程度接近したところで、体をバネのように縮め、跳躍しようと試みる。
「ヤーッ……」
だが、それらの行動は裏目に出た。
お見通しとばかりに、素早く靴が動き、跳ねる直前のセヤナーの顔を強く踏みつける。
「ブオッ……! ヒハヒイイイイイ!」
視線は適当な方を向きながら、狙いは正確。
そのまま小刻みにステップし、左右に踏みにじる。
「ビャビャビャビャビャビャビャ! ビャッアッアッアッアッアッ!」
ほんの数秒で、的確に痛めつける。
そして、締め。
「ギュヴア゙ッ!」
一気に押し潰し、息の根を止める。
後は、公園に敷き詰められた土に染みていくだけだ。
今回も呆気ない。
仕留めた当人の感想はそれだけだった。
この人物は、何百匹何千ものセヤナーを駆除してきた業者の一人。
今更、ただの一匹程度でどうこう思うことはない。
辺りを見回せば、同じような光景がある。
「ヤアアアア! ヤメメメメメメメ……メ゙ッ!」
一人の成人に口の両端を引っ張られ、体が半分に裂ける成セヤナーがいれば、
「エ゙ッ! エ゙ッ! エ゙エ゙エ゙……エ゙ッ!」
「アッー アッー アッー……」
「ンンンンンンン! ヒリダセンンンンンンン!」
十代ほどの子ら複数人に追い詰められ、肛門吸着型リードを突っ込まれたセヤナーの群れがいる。
「ギュッ! ギュッ! ギュッ! ギュッ! ギュアッ!」
「ヤアアアアアア! オカーサアアアアアアン!」
「ナンデエエエ!? ナンデエエエエエエエ!?」
「ヤアアアア! ヤアアアア!」
くたびれた印象の壮年に、目の前で親セヤナーを素手でねじり潰され、泣き喚く三匹の子セヤナーもいた。
その三匹もまた、同様の方法でねじり切られていく。
「アアアアア……ア゙ア゙ッ!」
「ヤメッ! ヤッ! ヤ゙ア゙ッ!」
「ヤ……ヤ゙ッ!」
この町の市民は、たくましい。
表向きは平然としながらも、心の中では感嘆していた。
上司から事前に聞いていた通り、害虫程度では微動だにしない。
例え昼食の時間でも、それは変わらないらしい。
「いかがですか? この公園は」
近くのベンチでサンドイッチを口にしていた人物が、業者にそう問いかける。
こちらは地元発展を目的とするPR員。
柔らかな物腰と雰囲気が親しみやすさを感じさせる。
「実に衛生的です。利用者の方々は模範的な清潔感を有しておられる」
静かに、それでいて明瞭な返答。
事務的な印象漂う堅い口調だが、不思議と嫌味は感じさせない。
この点に関しては、上司の弛まぬ努力によるものだが。
「ええ。地域一丸となって、素敵なまちづくりを目指してますから。観光客の皆さんも、理解ある方々ばかりです」
業者とは対照的に、朗らかに微笑みながらPR員は言う。
地元発展の顔役に選ばれただけはある。
「見て取れます。ここに来る途中もそうでした」
駅からこの公園に到るまで、町は清潔感だけでなく活気にも満ちていた。
その上、ただ町を盛り上げるだけではない。
ある者たちの支援も行なっている。
「この町は、良いセ虐師の方々に恵まれておられる」
セ虐師。
セヤナーに過酷な宿命を与え、残虐な末路へ導く者たちの呼び名、そして称号だ。
この豊かな自然と活気付いた町は、人だけでなくセヤナーにとっても好ましい環境。
しかし、人とセヤナーが共存できるか否か。
それは、この世界の歴史が明示している。
だからこそ抑止力として、セ虐師や駆除業者が存在するのだ。
「はい。地元セ虐師の皆さんだけじゃなくて、他の地域から来て下さるセ虐師の方々も、良い方たちばかりですよ」
良い方。
それすなわち、セ虐師として優れていることを示す。
セヤナーに残虐なる最期を与え、この世から追放することで、町は清浄化され、結果的により良いまちづくりに繋がっていく。
無論、それだけがセ虐師たちの目的ではないが、結果は結果。
町にとって、好ましい存在であることに変わりはない。
業者はふと、思ったことを口にする。
「我々駆除業者の出る幕はないと存じますが……。今回は何故、お招き頂けたのでしょうか?」
そこでPR員の笑みがわずかに深くなる。
「そんなことありませんよ。駆除業者の方々も、この町は歓迎します」
人差し指を上に向け、提案する。
「そうだ。今日は私のお気に入りの場所の一つを見に行きませんか? きっと、あなたも好きになれると思うんです」
愛想良く、鮮やかな笑顔。
しかし、その内側に一種の凶暴性が秘められていた。
業者は思う。
これは……。
「……分かりました。是非とも、御同行させて頂きます」
いずれにせよ、この町におけるセ虐事情の調査が今回の仕事。
断る理由などない。

PR員の案内でやって来たのは、地域でも名のある山の中。
このように、生い茂る木々に囲まれた環境でも、セ虐活動が行なわれているようだ。
「オオオアアアアア……… オオオアアアアア……」
声が聞こえる方を辿れば、木々の間に引き伸ばされたセヤナーが固定されているのが見える。
個体差もあるが、セヤナーは引っ張られることで通常の体長よりも結構長く伸びる特徴がある。
もちろん、限界以上に引き伸ばせば千切れるが、そこは研究と経験の賜物であろう。
セヤナー自身は苦しんでいるものの、一向にその体が裂ける気配がしない。
「他のセヤナーを誘き寄せる罠です」
PR員が、人懐っこい笑顔で言う。
「伸ばしセヤナー罠、略して伸ばセ罠です。これを使えば……ほらっ」
どこから聞きつけたのか、他のセヤナーが慌てた様子で伸ばセ罠に近付いてくる。
「ヤー! ココカー ドウシター? ドウシター?」
「アウエエ…… アウエエ……」
「ヤ……ヤー? ナニ イットルン?」
恐らくは駆け付けたセヤナーに助けを求めているのだろう。
だが、限界まで引き伸ばされた体では、まともに口を利くことができない。
相手もまた、理解できない状況に困惑するしかない。
「こうしてセヤナーを引き寄せて、後は……!」
駆け付けた方の個体に急接近。
その動きは野生の肉食獣のごとく、しなやかで非常に素早い。
表情も、先の穏和なものから、獣のそれと同じものへ。
「ヤー?」
セヤナーが気付いた時には、時すでに遅し。
その体は確と掴まれ、鞭のようにしなるPR員の躍動に合わせ、手近な木へと突っ込まれていく。

泥が跳ねるような音。

犬歯を剥き出して笑むPR員の掌には、先ほどまでセヤナーだった、粘り気のある残骸がこびりついていた。
「……鮮やかですね」
業者はわずかに目を見開き、素直に感嘆した。
「ええ、楽しい……」
凶暴な微笑みをこぼしながら、PR員は狩りを楽しんでいる。
その表情に、公園でも感じた気配を思い出す。
やはり只者ではない。
更に、地元PR員という肩書き。
そういうことか、と業者の中で合点がいく。
地元PR員という役職は、ただ地元発展のためのPRをするだけではない。
こうして意欲的に最前線に立ち、地元の清浄化に貢献することも使命であるようだ。
その人選に、狂いはない。
この人物こそ、町のPR員の適任者だ。
「オアッ? ……オアッ オアア オアアアア!」
伸ばセ罠個体は、ようやく現状を理解できたらしい。
今になって悲鳴を上げている。
「おう、殺ってんねぇ」
麓の方角から、そんな声がかけられる。
町のセ虐師たちだ。
全員、思い思いの得物を持参している。
「こんにちは、皆さん。先に楽しんでますよー」
「相変わらず元気だねぇ。そちらさんが昨日の話の?」
「はい。先日お話しした業者の方です」
その後の挨拶は、ごく簡易的な形式で済まされた。
皆、待ち切れないのだろう。
次の標的がいるのだから。

山の中腹にある森林地帯。
この場所では、山菜を主食とする野生セヤナーの群れがあった。
十数匹の親セヤナーが、百匹近くの子セヤナーを育てるコロニーだ。
「セーヤ セーヤ」
「ヤー ヤー ヤデヤデヤデー」
「ヤー オチビタチー ゲンキー」
百以上の個体数となれば、相応に賑やかだ。
セヤナーたちは全匹、活気付いている。
だが、それはセヤナーたちに限ったこと。
主食とされる山菜は、町の管理下にある植物であり、許可なく無闇に採取することは禁じられている。
だが、セヤナーたちはお構いなしだ。
他にも、山中に糞尿を好き放題撒き散らしたり、山登りに来た観光客から食物や飲料を盗むといった行為も平気で行なう。
だからこそ、彼らが動き出すのだ。
「セヤナーのみんなー。こんにちはー」
セヤナーたちが振り向いた先には、地元PR員を筆頭とする人間たちがいた。
「ヤー? ニンゲンサン ナンノ ヨウヤー?」
「みんな。ここの山菜は許可をもらってから取るようにと、何度も注意しましたよね?」
「ヤッ! ……ヤー」
心当たりがあるようだ。
「他にも、用を足すのは決まった場所で。人の持ち物は盗まない。これも何度も言いましたよね?」
「ヤアア! ヤッ……! ヤッ……!」
悪いことと自覚しながら、何度も行なったようだ。
「まだまだ悪いこと、しましたよね?」
「アッ…… アッ……」
図星。
「何で?」
「……ヤー ウチラー ウチラー……」
PR員他、人々は剣呑な視線を向ける。
「……ウチラー ソウセントー イキテイケンー」
「……なら」
PR員は、もう一つ疑問を投げかける。
「何でそんなに子セヤナーを増やした?」
「ヤアッ! アッ……! アッ……!」
「盗みをしなきゃ子を食わせらんねぇ。迷惑かけなきゃ生きてけねぇ……」
PR員はもう、情けをかけない。

「考えなしじゃねぇか」

気付けばPR員の姿は、質問に答えていたセヤナーの目の前に。
すでに振り抜かれた爪先は、そのセヤナーの顔面を抉っていた。
「アッ! アッ! ヤアアアア!」
息絶えた残骸の体液が、別の個体の顔に飛び散る。
それを皮切りに、人々は殺到する。
「モ゙オ゙オ゙オ゙オ゙! グザイ゙イ゙イ゙! グザイ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙!」
「それ、お前らの糞」
まだ生暖かい自分たちの糞に、顔面から押し込まれる個体がいた。
「ウチナー! ウチッ……ヴヂイ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙!」
「山中不法占拠、退去よろしく!」
まだ強気に出ていた個体は、巣ごと丸太で叩き潰される。
「ギイヤアアアアアアア! セヤナアアアアアアア! モエルウウウウウウウ! ナンデエエエエエエエ!」
「セヤナーの体の95%は水分。なら、その水分に液体着火材を混ぜれば……耐熱性は上手く働かない、っと」
炎上するセヤナーの悲鳴を無視し、冷静に分析するハンサムなマッチョ。
「ナンモ゙ッ! モッテヘン゙ッ! ヒトニ゙ッ! キラレルウウウウウウウ! ドウシテエエエエエエエ!」
「……」
仕込んだ仕事道具をわざわざ教える義理はないとばかりに、無言で連撃を入れる業者。
セヤナーたちは次から次へと残骸に変わっていく。
「ヤーデー……!」
そこへ、群れのリーダーである巨大個体がやって来た。
「おう、おせぇぞ」
本性と殺意を剥き出しにしたPR員が、凶悪な笑みで迎える。
「オマエラー……! スキカッテー……! ユルサナイー……!」
「お前が言うな」
一瞬で巨大個体の眉間まで跳躍し、強烈な回し蹴りを、両足一発ずつ。
そのまま、猛烈な拳のラッシュを浴びせる。
「ブッ! ボッ! ボボボボボボボ!」
巨大個体はなす術なく打たれ続ける。
「ナ゙ン゙エ゙……? ヴヂナ゙…… ガン゙ゼン゙ゼヤ゙ナ゙…… ナ゙ン゙エ゙…… オ゙マ゙エ゙…… ゼヤ゙ナ゙…… ナ゙ラ゙ン゙ノ゙……?」
「あ゙? そんな能力、効くわけねぇだろ」
この町の住人は皆、セヤナーの感染能力を無効化する感染能力抗体の持ち主である。
しかもそれは、生物学や医療薬学といった方面によってつくられた人工的なものではない。
この町は、古の時代からセヤナーを狩る民族の地域。
時にセヤナーを食し、セヤナー関連の病を自力で治し、セヤナーに関する事柄全てを自力でねじ伏せてきた。
有する感染能力抗体も、文字通り天然物だ。
まさに、セヤナーを残虐なる悪夢に叩き落とす民族、セ虐民族である。
「もう終わりか!? あ゙あ゙!?」
「ヴヂ…… ヴーヂーナ゙ー…… ヴーヂーナ゙ー……」
必死に抵抗しようと、巨大個体はお決まりの威嚇行動をとる。
だが、それも仇となる。
「ヴ……ヂ……イ゙ッ! イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙!」
セヤナーの威嚇行動は、全身を震わせて波打たせるという形式だ。
少なくともセヤナー同士であれば効果はあるものの、一方で全身が柔軟に揺れ動く分、外部からの衝撃に脆くなるという研究報告がいくつか提出されている。
今回のケースも、それに当てはまったらしい。
PR員の激烈な連打に加え、自ら起こす振動により、表皮だけでなく内臓にも甚大なダメージを与えることとなった。
「ゲブオッ……! ゴヴォヴォッ……! ゲブゴヴゲブゴヴ……」
命運尽きた。
巨大個体はPR員のラッシュ攻撃に耐え切れず、絶命していった。
そして、また新しい残骸がいくつも。
この山で狼藉を働いていた群れは、一時間足らずで全滅となった。

一掃が終わり、セ虐師たちが解散する中、PR員と業者が向き合う。
「よう、どうだった?」
PR員にそう問われた業者は、わずかに口元を綻ばせる。
「とても良い機会でした。やはりこの町は、良いセ虐師の方々に恵まれておられる」
その言葉に、一切の嘘偽りなどない。

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