セヤナーを虐めたりいじめたりイジめたりしたい

休みに友人に誘われ温泉旅行へ行くことになった。
私が車を運転しそろそろ目的の温泉街へ着くかという頃友人が車を停めるように言うので道の脇に寄せて停める。
「どうしたんですか?」
「あれ見てあれ」
「親子のセヤナーですね、あれが?」
友人の指さす場所には親子のセヤナーがのそのそと道沿いに進んでいる様子が見える。
「あれって遠くから噂を聞いて頑張ってここまで来たって感じじゃない?」
「ええ、この辺に住むならほとんど街の中に住むでしょうし」
「だよね、だからさあ、私たちが連れて行ってあげるのはどうかなって思って」
友人は楽しそうな笑顔でそう言う。
「なるほど、それはいいですね」
友人の提案を理解し簡潔にどうするかを相談すると車を降りて親子のセヤナーに話しかける。
「君たちはこの先の温泉に行きたいんですか?」
私たちが近づく途中に気づいて警戒の姿勢を取っていた親セヤナーは私の言葉を聞くと途端に警戒態勢を解いて話し始める。
「セヤナー モウスグデツケルンカー?」
「ええ、すぐに着きますよ、ここからなら君たちでも1日かかりません」
「セヤカー!ヤットヤデー オチビー モウスグヤカラナー」
「ヤー ウチナー ガンバルー」
子セヤナーは疲れた様子で答えている、大きさからして最近産まれたのだろう、移動中に産んだのかもしれない。この小さい体で長距離移動は堪えるだろう。
「大分疲れてるみたいだね、私たちの車で連れて行ってあげるよ」
「! ホンマニエエノンカー?」
「いいよいいよ、ついでに案内もしてあげよう」
「アリガトナー」
私たちは車から「こういうとき」のために持ってきた水槽に親子を入れると窓から外がみえるように荷物の上に置きしっかりと紐で固定し出発した。



「ここがセヤナー達専用のお風呂だよ、ここ以外にも2か所あるけどセヤナーはセヤナー専用のお風呂以外入っちゃダメなんだ」
「オッキナオフロ- ヤデー」
「ミンナー プカプカー」
「ここは観光客向けのお店が並んでるとこだね、ここではセヤナーたちがご飯をおねだりしてるんだ」
「ホンマヤー!エビフライー!」
「エビフライー!」
「路地や草の中に箱があるでしょ?あれは君たち用の家なんだ」
「ウチノウチー?」
「ウチノウチーヤナー!」
「旅館の裏やご飯屋さんの裏に箱があるんだ、ご飯が貰えなくてもごみ漁りせずそこへ行けば残飯が貰えるからね、ごみ漁りはしちゃいけないよ」
「セヤカー」
友人の説明と窓から見える光景に目をキラキラさせどんどんニコニコ顔になるセヤナー達を連れ宿に着いた。

チェックインを済ませ鍵を受け取ったあと旅館の従業員に聞く。
「野良セヤナーを連れて入っても構わないですか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
そうして大きめのビニールシートを追加で受け取り水槽は自前で持ってることを伝える、これは確認ではなく合言葉のようなものだ。
私たちは荷物とセヤナー達を部屋に運んで身軽になった後セヤナー達にしばらく待つよう言い昼食や買い物をしてから早めに宿に戻る。
そして、
「子セヤナーのお風呂に入る練習をしましょうか」
部屋毎に設置されているバスルームに水槽を持ってきて言う。
「オフロノー レンシュウー?」
「ええ、大きなお風呂だと子セヤナーが溺れて死んでしまうことがよくあるんですよ」
「ソウナンカー!?オチビー チャントレンシュウスルンヤデー」
「セヤナー ウチナー レンシュウー」
親子を納得させ小さな親セヤナーがぎりぎり詰めれるほどの蓋つきの四角い箱にお湯を入れ子セヤナーを入れる。
「ヌクイー」
そう言った子セヤナーがだんだんと膨れとろりと溶けていき喋れもしなくなる。
「オ オチビー!?」
「これは...病気だね」
「オチビー ビョウキー...?」
「そうですね、でも親セヤナーならこの病気を絶対知ってるはずですよね」
「ウ ウチハー シラヘンー..」
病気なんて嘘である、これはセヤナーを溶かすセヤコロリをお湯に入れていたからだ。
成長促進効果と溶解効果で水分を大量に吸わせお湯で薄めて溶かし処分を楽にするタイプ、それ自体に殺傷効果はないが簡単に死んでしまう状態にするものである。
「オチビノビョウキー ナオシテー オネガイー」
「仕方ありませんね、治してあげましょう」
「そうだね、仕方ないね」
私と友人は笑いを堪えながらまた別のセヤコロリを用意する、今度はセヤナーを固めて狭いところから取り出したり追い出したりするための非殺傷の凝固タイプのセヤコロリである。
上から吹き付け、セヤコロリを染み込ませた紙を貼った薄い板を箱の側面に沿って差し込み塗りつけ、蓋で受け止めるようにして子セヤナーをひっくりかえして底面にも吹き付ける。
そうして表面はある程度硬さを取り戻した子セヤナーを箱を横にしてゆっくりと慎重に水槽に取り出すと親セヤナーと同サイズで透明度の高いセヤナーが現れる。
「これで後は何もしないで待っていれば治りますよ」
「よかったねー」
言いながら友人は親セヤナーを水槽に入れてやった。



「オチビー ダイジョウブカー?」
「オカ..サン..ウゴ..ケナイ-..コワイー..」
体はほどんど水分で表面が薬品の効果で固まっただけ、更に急激に水分を取り込み大きくなったせいで感覚も繋がらない体でなんとか声を搾り出す子セヤナーに親セヤナーはそっと近づく。
「ダイジョウブヤデー スグナオルカラナー」
そうしてすりすりと体をなでるように擦り付ける。
「オカア..サン..」
子セヤナーは親セヤナーをじっと見つめ言う。
「ドウ..シテー..?」
驚愕の表情で。
「ヤー..?」
親セヤナーは訳が分からず子セヤナーの体を見ると子セヤナーに裂け目ができそこから体の中身が流れだしている、表面に膜ができた程度にしか固まっていなかったのだから擦ったりしたら裂けても不思議はない。
「アッ..アッ...」
子セヤナーは先ほど溶けた時以上の、明確な死に近付く光景を見て恐怖の表情に変わる。
「あーあ、なんてことするんですか」
「ヤ!?オ オチビガー!オチビガー!タスケテー!」
「うーん、そうなったら治す方法は知らないなあ」
「ナンデー!ナオスッテ イッター!ウソツキー!ウソツキー!」
「ひどいこと言いますね、固まるまで待ってたらちゃんと治ったんですよ?」
「そうそう、何もしないで待つようにっていったのに勝手に子供に触って穴をあけたのは君じゃん」
「ヤ!?ウ ウチガー?チガウー..チガウー..」
「そうですよね、病気のこと知ってたはずなのに言わなかったり治る前に勝手に触って穴をあけたりしたのは親セヤナーですよね」
「ああ、もしかして子供を殺したかったんじゃないかな?」
「ヤー!?チガウー!チガウー!」
「ああ、病気の子供なんていらないってことですか」
「そうそう、この子のせいでここに来るのが大変になっただろうし病気の子なんていたら拾われて飼いセヤナーになることもできないからね、邪魔だったんだよ」
「チガウー!チガウー!」
親セヤナーは必死に否定しながら飛び跳ねている。
「アッ...アッ...アッ...」
その振動は子セヤナーに伝わり中身が出るのを加速させていた。
「ほら、今も揺らして子供が早く死ぬようにしてる」
「ヤ!?」
親セヤナーはピタリと止まり子セヤナーを見る、既に中身は半分ほど流れ出しゆっくり脱色し始めている。
そして何より怯えと悲しみが混じった顔で涙を流しながら親セヤナーをじっと見つめていた。
「オ オチビー...」
「オ..カ..サ..ナ...デ..ド...シテ...」
思考力の落ちた子セヤナーには言葉と親セヤナーの行動からもう親セヤナーが自分を殺そうとしているということに疑いを覚えることもできなかった。
「ウ ウチハー...ウチハー...」
親セヤナーは勘違いを正す言葉が思い浮かばずウチハーを繰り返すばかりである。
そうして子セヤナーが完全に脱色しの中身が出きって絶望と悲しみの表情の貼りついた薬品の効果で溶けなかった抜け殻の膜が水槽で広がる子セヤナーの中身に浮かぶのを呆然と見つめながらぽつりと、
「ウチハ..ホンマニ..シラヘンカッテンー..」
そうつぶやいた。
「そういうことは生きてる間に言ってあげないといけませんよ。」
更に追撃するように言いながら子セヤナーの薄っぺらい抜け殻をつまみあげる。
「ほら、こんな悲しそうな顔のまま死んじゃったじゃないですか、あなたのせいですよ」
そしてべちゃりと親セヤナーの上にその膜を落とした。
「アッ...アッ...アッ...アッ...」
その後のことを親セヤナーははっきり覚えてはいない、ただセヤナーの悲鳴が、子セヤナーの助けを求める声が苛むように聞こえてきたのだけは覚えている。


「あー、楽しかった、あそこまで簡単に騙されるとかほんと笑いを堪えるのが大変だったよ」
「私もですよ、あの雑な演技とか必死で笑い堪えてましたよ。でもちょっと手間が掛かりすぎじゃないですか?」
「まあねー、でも手間の分は楽しめたでしょ」
「そうですね、けど後はもっと手軽な感じでやりましょう」
「そうだね、温泉に来たんだから美味しいものとか温泉も楽しみたいしね」
「じゃあ次のセヤナーを探しがてら観光に行きましょう」

一泊して温泉で疲れを癒し、美味しいものを食べ、セヤナーでストレスも発散、有意義な休みを過ごし帰り道、親セヤナーは殺さず車の後部に乗せて温泉街から遠ざかる所をじっくり見せてあげた。
街から出て木に挟まれた道路に入るころアッと一声鳴いた、あんな目にあってもあの街に未練があったのだろうか。結局親セヤナーは温泉にもご飯にもありつけていないが、いや、子セヤナー入りの温泉には入れましたか。
十分温泉街から離れ車の通りの少ない山に囲まれた道路の脇に車を停めると水槽をバシャリとひっくり返す。
「アッ,.アアア..オチビー..オチビー..」
子セヤナーだった液体が地面に広がるのに狼狽える親セヤナーが滑稽だ。
「じゃあ元気でね、ばいばい」
そういって髪飾りをチョキンと切って別れを告げる友人。
「イタイイイイイイイイイイイイイ!タスケテー!ユルシテー!」
「なかなか楽しかったですよ、それでは」
「アアアアアアアアアア!イタイイイイイイイイ!イタイイイイイイ!」
私も別れをつげながら片目にボールペンを突き刺して車に戻る。
「楽しかったですね、有意義な休みでした」
「うん、また来ようね」
「ええ、そうですね」
よろよろと道の脇の林に逃げ込むセヤナーをバックミラーで見ながら友人と次の旅行の約束をして帰路についた。

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